Aさんの涙
もう何年も前に卒業していった生徒さんですが、私には、忘れられない涙があります。
高校2年生の春頃から通い始めてくださったAさん。
私の塾に来ていたお友達から、こごま英語教室のことを聞いて、お父さん、お母さんにお願いして、私の塾に来てくれるうようになりました。
初回の授業で、「100万円の表」を書いてもらったところ、彼女は、書く前から「私、全然、書けないと思います」とはりつめめた表情でした。
(注「人称代名詞の表」のことを、私の塾では「100万円の表」と呼んでいます)
「うんうん。そういうひとは、Aさんだけじゃないから、大丈夫」
「私、そういう高校生、これまでたくさん指導してきたから、大丈夫だよ〜」
そう力づけながら、とりあえず、その表を書いてもらいました。
Aさんは、だいたい半分ぐらいしか、書くことができませんでした。
そのときのAさんの、一生懸命な表情を見ていて、思わず、ふと言葉がこぼれてしまいました。
「Aさん。……こういう状態で、中学とか高校の授業を受けてきたんだったら、Aさん、これまで、とってもつらかったでしょう」
私がそう言った瞬間、Aさんは、
「そうなんです、先生。私、これまで、すっごくつらかったんです」
と言って、ぽろぽろぽろ…と、涙をこぼしてしまったのです。
寄り添う気持ち
中高時代、私にとって、英語は、ずっと「得意で、大好きな教科」でした。
そういう感覚で英語に接していると、「中学で学習する内容が、うまく理解できない状態のままになってしまって、学校の教室にすわっている」ことの不安やつらさが、Aさんの涙を見るまで、ちゃんと想像できていなかったなあ……と感じています。
Aさんの涙を見てから、「英語がわからなくて、中学や高校の教室で、苦しい・つらい思いをしてきたこと」に寄り添う気持ちで指導することが、とても重要なことだと意識するようになりました。
「好きではない、得意ではない」英語の勉強にチャレンジするために、あえて勇気を持って、うちの教室へとやってきてくれた中高生の生徒たち。
その勇気を持っていることは、ほんとうに素晴らしいことなのだと、心に刻むようになりました。
中学の英文法を体系的に学び直す
初回の授業で、「人称代名詞の表」が書けない生徒さんは、本当に多いです。
中3〜高校生の時点で、そんなふうに、英語に対する理解が停滞してしまっていると、もう生徒さんお一人の力では、どんなふうに勉強すればいいのかさえわからず、途方に暮れてしまうんじゃないかと思います。
「今まで、つらかったでしょう」という言葉をかけると、「はい、本当につらかったです」と涙を見せてしまう中学生の方、高校生の方に、私は、たくさん出会ってきました。
ときには、私が生徒さんにかけるその言葉を聞いて、一緒に涙してしまうお母さんも、何人かいらっしゃいました。
きっと大人であるお母さんのほうも、お子さんのつらさを感じて、つらい時間を過ごされていたのだと思います。
私の塾に来てくださる生徒さんたちの中には、難関校の受験を目指していらっしゃったり、公立中学・高校の授業では取り扱わない領域を学習する目的で来てくださる方もいらっしゃる一方で、「英語が苦手で」「どうしても学校の授業がわからなくて」という方も、多いです。
そういう生徒さんと一緒に、中学の英文法を体系的に学び直していく経験を、私は、たくさん持っています。
「初めて、英語の授業がわかるようになった」
「苦手な英語が、得意科目に変わった」
そんなお声もたくさんの生徒さんからいただいています。
宝物の記憶
前述のAさんは、素直で、とても真面目な、そして努力家の女の子でした。
高校2年の時点で、自分自身が、中学の英語を理解できていないことを認めるのは、ある意味、プライドが傷ついてしまうことだとも思うのですが、彼女はその事実を認める素直さを持っていてくれました。そして、私と一緒に、中学1年の内容から、しっかりと学び直してくださいました。
それは、ほんとうにすばらしいことなのです。
Aさんは、私の塾に来るまで、「適切な英語の勉強方法」を知らなかっただけなんじゃないかな、と思っています。
だから、「こういうふうに、勉強すればいいよ」と、背中を押してあげるだけで、彼女自身の力で、どんどん努力していってくれて、最後には、驚くほどのスピードで、英語力を伸ばしてくれたのです。
卒業するときには、お礼の花束を持って、私のところに挨拶しにきてくれました。
そのときの彼女の笑顔の記憶は、私の教師人生の宝物だと思っています。
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